10:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:44:12.33 ID:6ZY1ckmrO
「と、冨岡先生!ずっと…ずっと前から好きでした!つ、付き合ってください!」
なんと、あろうことか中庭で告白をされているではないか。私は思わず見つからないように隠れてしまった。そっと相手の顔を見る。クラスは違うが、同じ学年の女の子だ。そういえば、彼女も冨岡先生が好きだと言っていた。放送で流れたお客様とは彼女のことだったのか。なんということだ、先を越されてしまった。
11:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:45:31.08 ID:6ZY1ckmrO
「…悪いが君の想いに応えることはできない」
冨岡先生が断る。私はほっと胸を撫で下ろす。良かったまだチャンスはある。けれど、次の瞬間、彼女が信じられない言葉を放った。
12:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:46:32.97 ID:6ZY1ckmrO
「は、はは…う、嘘ですよ…冨岡先生、エイプリルフールです」
「…なんだ、そうだったのか」
ひっかかりましたねと、続ける彼女の目は全然笑えていなかった。そっちの方がよっぽど嘘だ。振られたショックをごまかしているだけではないか。けれど、私の方はその一言で告白ができなくなってしまった。こんなタイミングで告白なんてしたら、私の告白まで嘘だと思われてしまう。
13:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:47:30.41 ID:6ZY1ckmrO
「すまないな、人を待たせているから、失礼する」
冨岡先生がこっちにやってくる。いけない、早く立たないと。立って気持ちを切り替えなければ。
14:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:48:23.36 ID:6ZY1ckmrO
「なんだ、胡蝶。忘れ物は見つかったのか?」
「…ッ」
悔しくてたまらない。ずっと前から好きだった?そんなの私だって同じだ。いや、私の方がずっとずっと、それこそ前世から冨岡さんのことが好きだった。
15:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:48:59.17 ID:6ZY1ckmrO
鬼がいない世に生まれ、もう毒を飲むことも、無理な鍛錬をする必要もなくなった。お互いに姉の仇など討たなくても良い世の中になった。だから、きっと今度こそ想いを伝えられる。きっと今度こそ一緒に笑い合える。そう思っていたのに、あの子が自分を守るためだけについた嘘のせいで…悔しくてたまらない。
16:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:50:21.17 ID:6ZY1ckmrO
「はい、見つかりました。ありがとうございます」
とにかく今日のところは出直そう。そして、また明日、頃合いを見て告白すれば良いのだ。大丈夫。前世から何年も何年も待ってきたのだから。高々一日ではないか。待つことなんて慣れっこだ。そう思っているはずなのに。
17:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:51:17.67 ID:6ZY1ckmrO
「胡蝶…」
「見ないでください!」
何故か涙が止まらない。ダメだ、早く泣き止まないと、冨岡先生に迷惑がかかる。早く泣き止め、感情の制御ができないのは未熟者だ。
18:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:51:59.93 ID:6ZY1ckmrO
「胡蝶…」
冨岡先生はなおも優しく声をかけてくる。本当に空気が読めない。こっちは優しくされればされるほど、涙が溢れて止まらないと言うのに。そんな乙女心など解さないのだろう。
19:名無しNIPPER
2020/04/01(水) 21:52:48.21 ID:6ZY1ckmrO
「…昼休みは十二時からだ」
「…はい?」
冨岡先生の発言が突拍子もないのはいつものことだけれど、今回のは本当に意味がわからない。
23Res/7.85 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20