16:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:41:27.17 ID:N9Z2+gYcO
「鮭大根だけは、毎回師範が作る…」
「しのぶさんが?どうして?」
「しのぶ様曰く、『これしか作れないんですよ』って…」
なるほど、起きている時間の全てを鍛錬と鬼狩りに費やすのが鬼殺隊。しのぶはそれに加えて治療や毒の調合も行なっている。料理など勉強する暇などない。作れる料理が一つだけでも別段不思議はない。けれど…
17:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:41:58.61 ID:N9Z2+gYcO
「どうして鮭大根なんだろう?」
作れるのが鮭大根というのが引っかかる。決して作りやすい料理ではない。その上有名なわけでもない。そんな料理だけが、どうして作れるのだろうか。
18:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:42:29.23 ID:N9Z2+gYcO
「さぁ…そこまでは…」
「それに…」
「お!権八郎じゃねーか!勝負しろ!」
「おい!止めろよ!伊之助!」
19:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:42:56.95 ID:N9Z2+gYcO
「それよりほら、もう風呂入らないと夕飯に間に合わないぞ?」
「あ!?もう、そんな時間だったのか!」
善逸の一言でふと我に帰る。随分長い間話をしていたようだ。三人は夕飯を食べる前に風呂に向かうことにした。
20:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:43:27.47 ID:N9Z2+gYcO
「がははは!俺が一番だ!」
「こら、伊之助!廊下は歩かないとダメだろう?」
風呂から上がるなり、伊之助は走り出して一目散に食堂に向かっていった。炭治郎は最初、まだ脚の怪我が治っていない善逸を助けて一緒に行こうとしたが。善逸の方から
21:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:44:09.42 ID:N9Z2+gYcO
「…」
「あら、伊之助くん、炭治郎くん、いらっしゃい」
食堂には義勇としのぶが居た。しのぶの方は食べ終わっていたが、義勇の方はまだ鮭大根を残していた。
22:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:44:43.19 ID:N9Z2+gYcO
「それでは私はこのあたりで失礼しますね…」
そうして、しのぶが席を外すと同時に二人分の食事が運ばれてくる。
「おい、半々羽織!それいらねえのかよ?」
23:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:45:10.22 ID:N9Z2+gYcO
「…いや」
「義勇さんは、鮭大根が好物なんだよ」
「は?そんな珍しいものが好物なのかよ?なんでだ?」
驚くのも無理はない。
24:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:45:39.43 ID:N9Z2+gYcO
「…ここの鮭大根が一番旨い」
嗅いだこともないような優しい匂いがした。そしてそれ以上にこれまでの違和感が全て繋がった。
どうしてしのぶは鮭大根という珍しい料理だけを作るのか。
どうして義勇がやってくる日は毎回鮭大根なのか。
25:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:46:11.26 ID:N9Z2+gYcO
(義勇さんは知っているのだろうか、この鮭大根はしのぶさんが作っているのだと…)
知っていても知らなくても、多分二人が想いを告げる日はこないのだろう。二人とも大切な人を失った。鬼を殲滅することが何よりも優先すべきことなのだ。きっとこれからもしのぶは鮭大根を出し続け、義勇はそれを食べながらしのぶの話を聞く。それだけで満足なのだろう。
26:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:46:39.17 ID:N9Z2+gYcO
「お待た…って、炭治郎!?なんて音してるんだよ!?」
願わくば、そのいじらしい恋とも言えぬような淡いその気持ちだけは踏みにじらずにいてほしい。炭治郎はそう願わずにはいられなかった。
それほど二人の間からは、嗅いだことのないような幸せな匂いが漂っていた。
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