8: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/02/13(木) 01:36:47.29 ID:YwNItfWC0
だからと言って楽しみ過ぎである、と言われてしまったらそれまでだが、そこはそれ。
大目に見てもらいたいものだ。
誰にするわけでもない言い訳を脳内で流し、レジから戻ってきたプロデューサーを見やる。
提げられたショッパーの他に何か持っているようだった。
それなに、と私が視線で問えば、彼はにこにことして「試食だって。今年の新作、限定商品なんだって」と言って私の口に放り込んできた。
「ん。……オランジェット? じゃないよね。柚?」
「そう。柚ピールらしい」
「へぇ。おいしい」
「……と言うと思って」
「買ってきた?」
「買ってきた」
プロデューサーは言って、ショッパーの中を見せてくる。
店員さんの口車に乗せられて買わされているのはどうかと思ったけれど、たぶん私が逆の立場でも同じように購入してしまったとも思う。
ふんわりとした柚の香りが鼻を抜けて、口の中には爽やかな余韻が残る。
確かにおいしい。
「甘いよね」
「ん? ああ、うん」
彼は私の問いの意味を取り損ねたようで、おそらくよくわからないままに返事を戻してきた。
甘いよね、のあとには、「私に」が入るのだけれど、付け加えたところで戻ってくる返事にそう大差はないだろう。
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