【ミリオン】紗代子の欲しかったもの
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44:伊丹 [sage]
2020/02/08(土) 21:11:10.36 ID:2EYiqEug0



「…Pの腕時計、思い出が詰まってるって言ってましたよね?
だったらちゃんとした時計ケース、買ってあげませんか?」


私は、務めて明るく、そう吐く。
直すのが無理なら…せめて、ちゃんと保管してあげたい。
私にはこれしか、あの時計にしてあげられることは思い浮かばなかったから。



少し考えるような間を置いてから、
ハンドルを握りながら彼は私に問いかける。


「……紗代子。
 …あの時計、好きか?」

その短い問いかけに、私は力強く、応える。 


「…はい!大好きです!」

「……そうか」



それきり、彼も私も言葉を発することはなかった。






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