34: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 20:44:21.90 ID:RvB9VQpu0
「あなたたちは、とてもよく似ています」
それが、仕掛け人さまの答えだった。
「似て、いるのですか?」
35: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 20:51:59.33 ID:RvB9VQpu0
「使いなさい」
仕掛け人さまから、青紫の布が手渡されて、
それから堰を切ったように、私の目から涙が零れ落ちる。
36: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 20:57:57.62 ID:RvB9VQpu0
「あ、しまった」
仕掛け人さまは突然、間の抜けた声を上げた。
「今、目が合いました」
37: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:01:17.76 ID:RvB9VQpu0
「……それと、これは先程の話の続きですが」
仕掛け人さまは、頭を上げないままに話を続けた。
「あなたたちは、心根が優しいところもよく似ていると思います」
38: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:04:19.53 ID:RvB9VQpu0
「貴方は卑劣です」
紬さんの第一声はそれだった。
「あの時、私とエミリーさんは一蓮托生だったのです。エミリーさんの発言であれば、私の発言であるのと同義です。確かに私は世間知らずな若輩者であるのやもしれませんが、その程度の責任感なら十分持っていたつもりでした。だというのに貴方は、あろうことかエミリーさんが一人でいる状況を狙い撃ちして、しかも逃げ場のない関係者席で──」
39: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:12:18.09 ID:RvB9VQpu0
「誤解です! 仕掛け人さまは──」
「……誤解なのですか?」
紬さんは疑わしそうに、仕掛け人さまに尋ねた。
40: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:19:21.20 ID:RvB9VQpu0
「少し、寄り道していきませんか」
私の思い付きのような言葉に、紬さんは迷わず頷いてくれた。
手を引いて歩く。ちらりと振り返って、紬さんはちゃんとこちらを見ていたけれど、
41: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:20:26.56 ID:RvB9VQpu0
「私とエミリーさんが、似ている……」
肯定か、否定か。小刻みに震える奥歯を噛み締めて、それでも両の目だけはしっかりと開く。
私は、やっとのことで立っていた。
42: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:24:12.33 ID:RvB9VQpu0
「私のことばから、何かを『視た』から、そのように応えてくださるのではありませんか」
──紬さんが優しいから、そのように言ってくださるのではありませんか。
「エミリーさん、私は嬉しかったのです」
43: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:29:05.26 ID:RvB9VQpu0
「あなたには私が変わってしまったように感じられたのかもしれませんが、
それは半分だけ間違っています」
「半分、間違い……」
44: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 21:33:18.38 ID:RvB9VQpu0
「その、あまりこのようなことを改めて口にするのは、少し気後れしますが」
照れくさそうに、紬さんは笑った。
私は、私こそ、報いなければならないのではないか。
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