【FGO】アーチャー「2月2日のカルデアにて」
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5: ◆XVOS/FY0A/il[sage saga]
2020/02/06(木) 22:55:46.28 ID:SoHlR5BC0
(セイバーが心配していた、か)
ブーティカの一言を反芻しながら、考える。
流石にもう慣れたものの、思い返すとやはりこのカルデアは不思議な環境だった。
かつて共に戦い、かつて敵対した彼女が、今また仲間として側にいる。
まさかサーヴァントの身でありながら、彼女と肩を並べる日が来るとは思いもしなかった。
そして、共に並び立つからこそ思い出す。
彼女がどれほどに頼もしい存在であったかを。
常に前を向き、どんなに強大な敵が相手であろうと怯まず、どんなに困窮した状況であろうと屈せず。
手にした聖剣の名の通り、勝利を約束する者。
騎士の中の王―――アルトリア・ペンドラゴン。
今回の人理修復の旅に於いても、彼女がどれほどの貢献を果たしたかは、計り知れない。
「おや、アーチャー。こんな所にいましたか」
ふと、声が掛かる。
視線を向けると、そこには夢の中で見た少女の顔が、今もまさに思案していた少女の顔が、あった。
「今朝は厨房にいなくて心配しました。具合でも悪いのですか?」
透き通るような微笑みを向けてくる彼女は、初めて出会った時のそれとはまるで違って見える。
自分がそうであったように、あの運命の戦いを経て、彼女も何かが変わったのだろう。
どこか余裕のない様子も、聖杯に対する悲観的な願いも無い。
騎士の王として、何よりもアルトリア・ペンドラゴン個人として、このカルデアの中で生活している。
「どうしました、アーチャー。私の顔に何か?」
あんな夢を見たからだろうか。
遠い過去に捨て去った筈の、遠い過去に消え去った筈の記憶が、おぼろげに蘇ってくる。
サーヴァントとして参戦した聖杯戦争ではない。
彼女のマスターとして参戦した、遥か遠い聖杯戦争。
出会いの記憶は鮮明であるが、その後の戦いは薄ぼんやりとしか思い出す事ができない。
抑止力としての長き絶望の日々によって、記憶はもはや擦り切れてしまっている。
だが、この瞬間は、彼女を見るとほんの少しだけ、思い出せるような気がした。
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