2:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:52:53.74 ID:WiWOK0yq0
コンマ1秒ずれることなく、0:00:00にメールが届いている。
タイトルは簡潔に「おめでとう」、だけ。
志希らしくもあり、らしくもないようなこそばゆいメールだ。
そのメールを見て思う。
3:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:54:32.15 ID:WiWOK0yq0
早過ぎる時間に何をするか考える。
もう一度寝る?悪くない、まだ少し微睡んでも問題ないだろう。
メールを見る?それもいい、誕生日を祝ってくれている仲間の声を今すぐにでも読んでみたい。
今したいのは……後者。
ベッドで体勢を変えて、スマホを覗き込むようにして……。
4:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:55:13.30 ID:WiWOK0yq0
彼はボクが寝ている間もアイドル達のコールを真摯に受け止めたのだろう。
そしてボクが目を覚ましたのを見て、力尽きたわけだ。
そう考えるならそのタイミングも許せるかな、と思案する。
寝起きで思考が緩んでいるのがよくわかる。
普段ならこんな考え方はしないはずだから。
5:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:56:08.92 ID:WiWOK0yq0
そしてボクはコートまで着込んで、自分の部屋どころから寮から出て歩いていた。
目的はない。スマホだってない。エクステだってつけてない。
ポケットに小銭だけ入れて、やっと道路が見えるほどに明るくなった道を歩く。
誕生日という特別な日だからこそ、と意味もなく誕生日の朝の道を行く。
6:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:56:50.31 ID:WiWOK0yq0
つい気分が乗って、気が急いて歩く足取りも軽くなる。
どこに行くかも決めてない、多分コンビニか公園止まり。
いつもの道の、いつもの店の、いつも歩いた道であっても。
今は、特別な感じがして−−−−−−
7:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:57:29.87 ID:WiWOK0yq0
急に現実に戻されたような、足が地についたような感覚がして、ついは足元を見る。
連れていた子犬はこちらを見るに舌を出して上機嫌だ。
挨拶もほどほどに別れて、また一人の時間に戻る。
けれど一度戻った現実感は拭えるものではなくて。
8:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:58:31.49 ID:WiWOK0yq0
「いらっしゃいませー」
最寄りのコンビニ、いつものお店。
品揃えは昨日見たところからは週刊誌が入ったくらいしか変わらなくて。
9:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:59:30.43 ID:WiWOK0yq0
結局何も買わずに、近場の公園の自販機に小銭を入れる。
公園には誰もいない……ということもなく。
『日課』のランニングをしている人達、
『いつもどおり』犬と休む人達、
そしてそれをベンチに座って見ているだけのボク、だ。
10:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 00:59:59.34 ID:WiWOK0yq0
誕生日を迎えたのだから、先に進んだのだから、飲めるかもなんて考えたブラックコーヒーは相変わらず苦くて。
口に入れたコーヒーをなんとか飲み込んで、改めて周りを見る。
周りはいつもどおりで代わり映えのしない日常で。
平日で、学校で、会社で。
11:名無しNIPPER
2020/02/04(火) 01:00:30.50 ID:WiWOK0yq0
何かを求めて外に出て出た自分が急にちっぽけに見えてきて。
特別な時になることを期待して空を見た自分が矮小に見えてきて。
変わらない日常の光景を嫌だと思っている自分を認識してしまっていた。
18Res/9.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20