47: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:49:19.50 ID:W4W9+UtG0
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旧校舎・地下2階・倉庫
霊感はない方だと思っていたけれど、背筋が凍る感覚がした。だけれど。
「なぜ……笑っていられるのですか?」
「私、笑ってるの?ふふっ、だって、可笑しいんだもの、当然でしょう?」口角をあげてみせる。得体の知れないモノを前に、何とかなると思い込んでいる自分が可笑しい。向こうも同じみたいね。言葉が続かないのか、西園寺さんの口を開けたまま止まっている。
「もしも、なんてことは誰しも考えることよ、特殊なアナタだから思いついた特殊なことじゃないの。それに、西園寺琴歌はそんなことは言わないわ」もしもを考えていたとしても、彼女は言わない。西園寺の家に産まれるということはそういうこと。
「それに、私はアナタと同じじゃないわ。速水奏はそんな高尚な人物じゃないの。私が転校してきた理由、教えてあげるわ。嘘じゃないわよ?かな子にも言ってない、特別よ」人形は反応してこない。西園寺さんの口は閉じてしまった。
「実家の居心地が悪いのは本当よ。でも、一刻も早く家を出なければいけないほどじゃなかったわ。前の学校も嫌じゃなかったわ。3年間過ごしても問題はなかったの」
「言っていることが……わかりませんわ」
「アナタは長い間ずっとここにいるのだものね。わからなくて、当然。この場所って、不思議なのよ。外の世界と比べたら」『キヨラさん』頃から、ずっとこの場所にいたならわからないでしょうね。
「速水奏は誤解されやすいの。アナタみたいに思う人がたくさんいたわ。外見も言葉遣いも、それに嘘つきだから。本当は普通の、平凡な内面を持っているなんて、思われない。愛に飢えたような、斜に構えた態度に見えるのかしら?」人形は答えない。勘違いを指摘されて、恥を覚えるのは人間と同じ。違うわね、これは人間を模造しているモノだから同じということ。
「ここは、速水奏でも、ただの高校生として扱ってくれるわ。西園寺さんみたいに、私より特別な生徒もたくさんいるし。外とは違う価値観の教師と生徒の中なら、私はそれ相応の扱いしかされないの。それが欲しかったの。そう扱ってくれる時間は、今だけだから、ここに来たのよ」私は嘘つきで、期待通りに振る舞ってしまう。だから、生徒以上を期待しない人達がいる場所が良かった。そのことに、かな子は気づいているのかしら。気づいているから、今みたいに私に接してくれているのかしらね……そうだったら、かな子も私に負けないくらい嘘つきじゃない。
「ふふっ」
「笑うところだとは、思いませんわ」
「ごめんなさい、アナタには無駄骨を折らせて。アナタの悩みなんてないわ、人形の夢なんて、私には関係のないこと。でも、呼び出されたのにこのまま帰るのも癪ね。アナタに言っておいてあげるわ」
「何……でしょうか」
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