28: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:34:15.87 ID:W4W9+UtG0
21
学生寮・2号館・343号室
「おかえりなさい、奏さん」
「ただいま、かな子」転校してきた初日から、かな子はおかえりなさいと言ってくれる。この部屋に戻ってくると、安心できる。安心できる場所があるのは、いいことね。
「可愛いもの愛好会はどうでした?」
「悪くなかったわ。何枚か写真も撮ってきたの」あの人形のようにイヤな視線もなく、西園寺さんが色々と紹介してくれるから長居をしてしまった。リペアしたウサギのぬいるぐみを大事そうに撫でている西園寺さんの写真は、かな子にも好評だったわ、我ながら良い表情が撮れたと思うわ。だからこそ、関係ないといいのだけれど。
「ねぇ、かな子?」
「なんですか、奏さん?」
「私の爪切り、どこにあるかわかるかしら?」
「爪切りですか?いつもの場所は見ました?」
「いつもの場所ってどこかしら」
「机の一番上の右側の引き出し、でした?」
「爪切りってどんなのかしら」
「小さな赤い爪切りですよね」
「全部正解。かな子、私のスペースでも少しなら覚えてるわよね?」
「全部じゃないですけど、はい」
「普通はそうよね」西園寺さんは部室に長くいるはずだし、紹介してくれた時に配置がわからないような態度はしていなかった。なのに、あの人形だけはわからない。写真に明確に映っているのに、見覚えも無さそうだったわ。
「奏さん、爪切り見つかりませんか?」
「ありがとう。でも、そういう意味じゃないの」かな子が首を傾げた。一緒に指を口に当てるのがクセ。ちょっとした動きが可愛いのよね。私も真似してみようかしら……柄じゃないわね。
「かな子、『キヨラさん』に会える場所を知ってたりしないかしら?」
「会える場所があるなら、一度は行ってます」
「そう……」昨日も思ったけれど、かな子は『キヨラさん』のことを神格化しすぎている。今のところ、ただの幽霊にしか見えないわ。そもそも、ただの幽霊を続けて見ていることがおかしいのだけれど。
とりあえず悩み事は2つ。ひとつ目は部屋に現れる幽霊、悪い存在ではないと思うけれど、かな子と私の部屋に居てもらいたくない。ふたつ目は、あの人形。私もそうだし、かな子が驚くようなことになったらイヤだわ。誰が犯人かわからないけれど、止めたい。私はこの学園で驚きの多い毎日を過ごしたくないの。そうなるとすべきことは?
「誰かに話を聞いてみるとか?」
「そうしてみるわ」かな子もこう言ってることだし、情報収集でもしようかしら。
正直なところを言うと犯人の目星はついている、西園寺琴歌。目的も動機もわからないし、何が何と関係しているかも全くわからない。けれど、彼女だという確信がある。少なくとも、関係はしているでしょうね。
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