104: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 21:03:49.36 ID:hoMUvMIQo
「『わたしに、何者であってほしいっすか?』って。そしたらプロデューサー、これまでに見たことがないくらい楽しそうに笑ってて。たったそれだけのことなんすけど、なんというか、あの一瞬が今でも忘れられないんすよね」
すっかり濡れた上着の上から手を当てて確かめる。
あのときのプロデューサーの笑顔が、心の奥のほうに深く突き刺さったまま抜けないでいる。
私とあの人とをいまも不自然に結びつけているそれは、あるいはいびつに捻じれた楔のようでもあった。
恐らく彼は、あとに続く私の言葉を待ってくれていたのだろうと思う。
雨粒が一〇秒ほど頭上を叩いて、しかしやがて息苦しさに耐えられなくなったのか、まるで空気に喘ぐみたいに擦り切れた声で彼は言った。
「あの人は、何て答えたんだ?」
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