高山紗代子「敗者復活のうた」
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86: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 12:49:55.80 ID:ZRhpxi3E0

『ダンスは随分と上達したが、まだ表現が固い』

 次第に体力もつきリズム感も鍛えられ、まだ自信は持てないがそれでも成長を実感し始めた頃、プロデューサーからメールが届いた。
 そしてその指摘に、紗代子は静かに、だが確かに胸が燃え上がるのを感じていた。
 自分の未熟さは、伸びしろだ。そう思うようになってきていた。事実、出来なくてもレッスンや努力で出来るようになった事のなんと多いことか。
 最初からは何も出来なくても、こうして身につければそれが実力になっていく。
 指摘され、注意されたのなら、それは自分が成長するチャンスだとプロデューサーのお陰で思えるようになってきていた。

紗代子「もしかして、だからプロデューサーは私を選んでくれたのかな……う、ううん。今はそれよりも……どうしたらいいんでしょうか、と」

『身体に無駄な力が入りすぎている。もちろん、体力がなければダンスはできないし、君はその体力をつけてきた。しかし逆にそれが君のダンス表現を固くしている』

紗代子「そうか。体力はついたけど、その分動きに力が入りすぎているんだ」

『言っておくがそれは悪いことではない。成長の過程ではままあることだ。これからは身体から無駄な力を抜くことを心がけることだ』

紗代子「それにはどうすればいいんですか……と」

『イメージとしては、両手に生卵をもっているつもりでダンスをするといい』

紗代子「生卵? はい、わかりました! そうか……生卵か」


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