99:名無しNIPPER[saga]
2020/01/01(水) 18:07:41.38 ID:12PeC/pS0
「それだけはダメッ!やめてよ!」
だが信代はそれを拒んだ。理由はわかっている。
治には前科がある。過去の犯罪が暴かれたら当然ながら刑務所行きだ。
殺人の前科を犯している上に誘拐や死体遺棄まで行っていたとなれば十年以上の服役は避けられないだろう。
「やめてよ…それだけは勘弁して…悪いのは私だから…」
信代は涙ながらに訴えた。悪いのは全部自分だと…
お願いだから逮捕するなら自分だけにしてほしいとそう頼み込んだ。
「それは出来ませんよ。何故なら祥太くん誘拐の主犯は間違いなく治さんです。」
「何でそんなことがアンタにわかるのよ!」
「わかりますよ。何故なら祥太くんの名前はかつての治さんのモノですからねぇ。そうですね榎木祥太さん。」
榎木祥太、もう捨ててしまった自らの名だ。
治に前科がある以上は身元を知られる元の名前など邪魔でしかない。
だがそのリスクを犯してまで治は子供に祥太という自分の本当の名を付けた。
「『祥太』という名はあなたの実の名です。それを付けたということは子供に愛情があった。つまりあなたが自らの意思を持って誘拐を行ったというなによりの証拠じゃありませんか。」
恐らくは治も愛情を持って自らの名を子供に付けたはずだ。
そこには間違いなく子供を守ろうとした意思があった。だがそれは自らの犯罪を暴くことに繋がってしまう。
治にとってこれほどの皮肉はないだろう。
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