13:名無しNIPPER[saga]
2019/12/16(月) 01:50:24.04 ID:w7wIwWN50
「おーっ!母ちゃんに髪の毛切ってもらったのか!似合うじゃねえか!」
道中歩いているとふとある一軒家から話し声が聞こえてきた。
この声は聞き覚えがある。確かあの万引き親子の父親の声だ。
すぐに二人は声のする一軒家を覗いた。
ちなみにこの家だがもう五十年以上は築年月が経つほど古びており表札には『柴田』という苗字が記されていた。
その塀の隙間から家の様子を覗くと見えたのは昼間見た父親とそれに少年の姿があった。
「母ちゃんに髪切ってもらえてスッキリしたなゆり。」
「そうだね、前の髪型は野暮ったかったからこれで可愛く見えるでしょ。」
父親とそれに母親らしき女性がなにから愉快に話し合っていた。
会話の内容から察するにこの家にはもう一人娘がいてその子が髪を切ったということ。
どんな風になっているのか気になるが生憎外からでは娘の姿を確認することが出来なかった。
「どうだい正太。ゆりの髪型似合うだろ。」
「髪型なんて別にいいだろ。それより腹減ったから飯にしようよ。」
そんな二人を呆れるような目で少年がこんな愚痴をこぼした。
ちなみにだが少年の名前は正太というらしい。
「まったく正太は…女の子が髪を切った時は褒めないとモテないよ…」
「まあいいじゃないの。このくらいの年頃は色気より食欲だからね。」
そんな正太を嗜めるのは若い女性と年老いた老婆だ。
恐らくだがこの二人、正太の姉と祖母なのだろう。
それから一家は正太の言うように夕食を食べ始めた。
家族全員が笑顔で食卓を囲うこの光景はまるで幸せを絵に描いたかのようだ。
まあこれ以上は見ていても何もならない。
さすがにこの状況で家族の団欒を遮ってまで昼間の万引き未遂を咎めることも出来るはずもなく二人がこの場を立ち去ろうとした時だ。
114Res/106.81 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20