【たぬき】小日向美穂「令和狸合戦ぽんぽこひなた 〜さらわれたPさんを追え〜」
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106: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2020/02/27(木) 01:23:25.84 ID:SQAfR/tb0

「――よくぞおいて下さった、婿殿。儂は本村のたぬきを率いる、龍崎玄葉と申します」
「はあ、ご丁寧にどうも……」

 通されたのは、村役場近くの講堂。いわゆる体育館的な空間で、正面にはささやかな舞台がある。
 中に入ると、ヒゲを生やした毛むくじゃらの大柄なおっさんが待ち受けていた。後ろには大小さまざまなたぬきがずらっと並ぶ。

「遠路はるばるお疲れでございましょう。配下の者に鯛しゃぶを用意させておりますゆえ、それで腹を満たすがよろしい」
「いえ、それはありがたいんですが」

 何もかも急な話ではあるものの、相手に敵意の類はなさそうだ。
 とはいえ、詳しい思惑を聞かなければどうにもしようがない。

「婿に迎える……というのは、どういうことでしょうか? 私はこの四国へ来たのも、あなたがたと出会うのも始めてです。正直、一体何が何やら……」
「ふむ、疑問に思うのもごもっとも。ここは本狸(たぬ)を呼んでご説明いたしましょう。――薫!」


 薫?
 龍崎氏が奥へ声をかけると、舞台にかかった緞帳の陰から、一匹のたぬきがおずおず顔を出した。

 ……あ!




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