タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7
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718:名無しNIPPER[sage]
2021/09/23(木) 02:08:56.73 ID:Fa1TUBhT0
>>712
タイトル「殺人木」


ある晩。毎夜飲み歩く男は、「俺の屋敷の庭には殺人木あるのだ」、と言った。

「俺はその木が恐ろしくて恐ろしくて仕方ないのだ。
 いずれあの木に俺も殺されるに違いない。そんな想像が浮かぶたび、背筋がぞっと震えるのだ。
 俺がこうして酒を飲み歩いているのは、あの木に殺されたくないがためなのだ」

普段は陽気に騒ぐ男が真剣にそう言い出すものだから、飲み仲間達も顔を見合わせて、
これはいよいよ本物の怪奇話に出会ってしまったぞと、興奮と好奇の色を浮かべたものだった。

「いや陽気な君がそこまで恐ろしがる木というのが、一体全体どんな物か、是非見てみたいものだ」

気の進まぬ様子の男を説得した一同は、これ幸いと怪奇話をつまみにしようと、酒瓶片手に屋敷へ向かった。
男に案内された庭には、確かに立派な太い幹の木が一本生えていた。
季節外れなだけあって、花はてんで咲いてはいないが、それはそれで月夜には不気味に映えているように思われた。

「昔。俺の祖父のそのまた祖父が、この木に殺されたのだ。
 その仇を討とうとした弟もまた、この木に殺されたと言う。
 それ以来我が一族では、この木には触れてはならないと言い伝えられているのだ」

それを聞いた誰かが「なるほど、つまり殺人木というわけか」と言った。
それを皮切りに、あの枝ぶりがそれらしい、いやあの葉の付き方が怪物のようだ、とそれぞれが好き勝手に騒ぎ立て、
酒の進まない屋敷の主の男を囲んで一同が飲んでいると、その中の一人がこんな事を言った。

「木といえば、我が家にもこんな話が伝わっている」
「ほうほう、どんな話だい?」
「村のある男が石に蹴躓いて、木に頭を打って死んだ。
 その弟は怒り狂い、よほど頭の硬さに自信があったのか、木に頭突きをしてまた死んだ。
 大工をやってた俺の祖父のそのまた祖父が、それだけ丈夫な木なら良い家が立つから譲ってくれ、と頼んだんだとさ。
 だがその家の連中は頑として肯かなかったそうだ。
 そこでこう思ったそうだ、『あの家の連中は、釘も打てないくらいに頭が硬い』ってな」

それはなんとも滑稽な話だ、と笑い転げる飲兵衛達の中。
酔いの覚め切った屋敷の主の男だけが苦い顔をしていたのだった。
その晩以降、男が飲みに出る姿はとんと見かけなくなったと言う。


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