タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7
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名無しNIPPER
[sage]
2020/06/08(月) 21:14:20.99 ID:/ypACInm0
「"バカには見えない服"ってあるだろ。裸の王様のさ。あれ、もし仕立て屋が本物を作ってたとして、なんでそんなものを作るんだろうって、思ったことないか?」
「だってそうだろ、裸に見えたって、何の役にも立ちゃしないじゃないか。だからおれ、思ったんだ、"バカには見えない"って、ひょっとして――」
……
夜。天気は曇り。街の明かりに照らされて、あちこちで赤い水たまりが光っている。
ビルがびっしりのオフィス街も、もはや見る影もない。砲弾が抉り、その上に瓦礫をトッピングした車道を突き進むのは、国が所有する正規の戦車たちだ。
それに随伴するのもまた、正規の隊員たち。しかし不思議なことに、彼らは狙いもないようなめくら撃ちを繰り返している。
割れる音、叩く音がこやかましい。
「"J"はまだ見つからないのか!」
誰かを探す彼らのそばに、歩み寄る者が一人。高校生くらいの少年だ。武器は持っていない。
装いも、何の変哲もないジャージを上下に着ているだけだ。……七色に光っていること以外は。
「こちら西ハ班、制圧続行中です、どうぞ」
『こちら東イ班、同じく制圧続行中。"J"の痕跡なし、どうぞ』
全身を光らせながら、隊員のそばまで近付くが、彼らの誰一人として少年の存在に反応しない。
少年は、無線機を持った隊員の前でぴたりと止まり、右拳をゆっくり引く。
「"高トルク"パンチ!」
少年が宣言した瞬間だけ、ジャージの光が一際強くなった。
放たれたのは、喧嘩慣れした様子もない、構えもコースも素人のパンチ。それが隊員に当たると、彼を向かいのビルに叩きつけた。ビルの壁にヒビが走る。彼の胴体は二つにちぎれながら、ずるりと地面に落ちた。
この時、他の隊員たちが見たのは、吹き飛ばされる隊員だけだったが、それによって全く別のことを確信した。
「"J"と接敵!随時掃射せよ!」
隊長格の男の号令で、小銃が一斉に火を吹く。先と同様、めくら撃ちだ。
号令を聞いたところで少年はジャンプし、空中でジャンプし、また空中でジャンプし……虹色で軌跡を描きながら宙を舞い、戦車の上に着地した。空中でキャッチした弾丸を放り捨て、拳を握り、振り上げる。
「"金属化"・"ハンマー"・"高トルク"パンチ!」
銀色に変化した拳が足元の装甲に触れると穴は開かず、戦車全体にヒビが走る。少年が跳躍してその場を離れると、戦車は爆発大破した。
「後ろだ!戦車がやられた!」
「こちら西ハ班!"J"と交戦中!応援を――」
無線機に向かって叫ぶ隊員の前に、少年が着地する。
「"高トルク"パンチ!」
……
多勢に無勢が逆一方の戦いも終わり、燃える街の真ん中で、少年が座り込んでいる。ポケットからスマホを取り出し、イヤホンを繋いで耳にはめた。
SNSのチャット履歴を見れば、通話の不在着信がずらりと並んでいる。通話ボタンを押した。
「gekkohくん!オペレートするって言ったでしょ!なんで通話切るの!」
かけるなり甲高い声が飛び出す。
「すみません、待てませんでした。市街地ステージで民間人がいたんで、動転してしまって」
「だーから、ステージにいるのは旧人類で、わたしたち人間とは違うって、何べん言わせるのよ!」
「どうみても同じなので、つい」
「ついじゃない!っていうか、あんな知能指数の低いサルどもが、わたしたちと同じなわけないでしょ!」
「はい……すみません……」
少年の声に力がないのは、立場の上下よりも、疲れと落胆の方が大きかった。
「それで?今日のスコア、どうするの?きみの取り分は30kくらいあるけど」
「次のマッチングは50時間後でしたっけ。適当に食料と日用品補充して、ジャージの修理まではsuper_dryさんの方でやっといてください。残りは帰ってからで」
「はいはい、いつもどおりね。迎えはいらないの?」
「月曜で輸送ヘリの燃費がすんごい下方修正されましたし、ちょくちょく節約しないと。じゃ、お疲れ様です」
「はーい、気をつけてね」
通話を切って立ち上がった少年は、街を去る前に、火の手に向かって少しだけ手を合わせた。
タイトル:「ゲーミングジャージ」「IQがカンストした男」
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