タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/02/16(日) 10:45:14.07 ID:FETyfwn30
>>「どす恋」
「そうは言いましてもな、わたくしは食わねばならんのであります、大きくあらねばならないのであります」
甚兵衛の巨漢は米をひたすら口に押し込んで噛みながら、不乱に口説く努力をしていた。
目の前の女もまた巨体であり、男とは異なり飲み込むまで口を開かない。
「浅香さん、箸が止まっていらしてますな。どうなさったのか? どんどん、お食べになってください。同業ですから、遠慮する必要などないのでありますよ」
「別に」浅香と呼ばれた女は噛んでいたものを嚥下して言った。
「何も遠慮しちゃあいないよ。噛んでる間に新しいものを一気呵成に詰め込むことができんだけですわ」
「そうですか」
二人は力士であった。男は前頭で、女は女性力士として活躍していた。
男は斯波山と言い、幕下転落の危機に瀕している。斯波山がそれを自覚しているのかいないのか、それは態度からうかがうことはできない。
何しろ彼は軟派な質で、遠征する毎に女を誘い買いなどしていたので、相撲協会の人間からよくは思われていなかったのだ。
そんな彼も三十を目前にし、身を固めたいと思うようになったのだ。
しかし彼の性質を知る女は皆敬遠して逃げていくし、せっかく新たにまぐわえそうな女をひっかけても、彼の性的な無節操が顔を出してこれまた逃げられてしまうのだった。
そういうわけだから、浅香に狙いを絞って食事に来ているのである。
浅香はかつて女力士として名を馳せていたが、長い伝統とはいえ土俵に上がることができないのに我慢がいかず電撃引退し、今は斯波山の所属する部屋で働いている。
知人は、痩せれば美人に違いないと皆言う。そしてそれは浅香自身もそうだろうと思っている。相撲なんかやっていなければ、男などいくらでもとっかえひっかえできるだろう。うぶな童貞を食い荒らして彼らが泣く姿を想像すると、彼女はエクスタシーのような勝利感を味わうのだった。
しかし女力士になってしまったのだから仕方がない、言い寄る男は少なかった。だから浅香は斯波山の誘いを受けたのだ。
彼女とて斯波山のことは嫌いではない。嫌いだったら誘いを受けていないはずだ。それに斯波山に対しては、自分と似た雰囲気を感じ取っていた。
同じ異性を誑かす人間として、同族的な連帯感を感じていたのだ。おそらく自分が結ばれるならもうこういった男しか残ってこないだろう、ともどこか確信めいた考えも心中にあった。
それは斯波山とて同じであった。軟派物の俺が捕まえられるのはこんなの程度だろう。痩せれば美人だしな。
相互の同情も重なって、彼らの間には冷めきった恋愛の感情が横たわっていた。それは燃えない。燃えないが、一通の太い運河のようなもので、その間を確かな交流は二人に強いつながりを抱かせた。
もう一押しだ、と浅香は思う。つながろう、とかそれに類することを言ってくれれば、私もすぐに手をつないでいこうと言い出せるのに。
斯波山は言った。
「浅香さん、あなたいつになったら身を固めてやるおつもりですか」
「いつでも構わんですよ、私は。今固めてやってもいいくらいです。来年でも、再来年でも。しかし早い方がありがたい。斯波山さん、あんたの方は」
「わたくしですか、早くしないと生涯独り身ですからね、早急にお願いしたいですね」
「では私はどうですか」
「良いですね、では浅香さんわたくしは」
「ええ、いいと思いますよ」
「そうですか、ではお願いしたいですね」
「はい、そうしましょう」
「それではこの後、仲を深めるためにちょっくらホテルに参りませんか」
「大丈夫でしょう。親方が何というか心配ですが」
「そのあたりは平気です。以前にわたくしはそういった話を親方としたことがあります。自由恋愛で婚姻を進めるのはいかが思うか、と。親方は言いました。現代は見合い結婚よりも恋愛結婚が主流だ。部屋の顔とか大企業、名家の跡継ぎならともかくお前は部屋に所属する単なる一力士だから、気にする必要はない」
「それはあなた期待されてないんじゃ?」
笑いながら朝香は言った。
「そうでしょうな。でもそれがどうしたというのでしょう。気楽に相撲を取ることができますし、好きな女を食って捨てるも自由にできるのであります。本命を捕まえるまでの間の性欲を吐き出す相手を好きにできるのもいいもんですぞ」
「それを交際を申し込んだ人の前で言いますか。私も似たような考えを持っているので、あまり強いことは言えませんが」
「そうでしょうとも! 我々は似た人間なのではないでしょうか。だからこそともにいようというのです。同じ所帯で、浮気のような恋愛を続けるのです」
「面白いですね」
二人は静かに食事を終え、勘定を済ませた。外に出ると温い風が足許に吹きつけ、互いの首筋のにおいをかいだ。
安心した表情で見つめあった。その脚で二人は夜を過ごすホテルへと向かった。
感想求ム
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