451: ◆rbbm4ODkU.[saga]
2020/10/25(日) 04:54:42.67 ID:vgJpznfL0
その少女は一階の窓の縁に組んだ両腕を乗せそれを枕に空を見つめていた。
セミロングで太陽の光を内側で反射するような薄く透き通った茶髪。紅白の鉢巻でまとめられた少し長めの前髪がいくらか暖簾のように顔にかかっている。オレンジに近い瞳は俺ではなく空に向けられていた。
純白の弓道着が彼女のその存在の薄さを際立たせているようにも思えた。
男『…』
軽空母瑞鳳、だよな。知識としては合っていると思うのだが空母は実際に目にした事がない艦娘が多い。先程の衝撃もあって確証が持てなかった。
こうして目線の高さが一緒になってはいるが瑞鳳という艦娘の背丈は随分と小さかったはずである。
瑞鳳『アレ、見えるの?』
相変わらず俺の方を見ずに質問を続ける。
だがいつかの川内とは違うように思えた。
川内は、いや川内に限らず俺と一線を引いている者は多い。嫌いという感情だけでなく深入りはしないという意識からそうするのだろう。それは別に珍しくもない。
だが彼女は違う。そう確信できた。きっと瑞鳳にとって俺と目を合わせることと空を見つめることに大差は無いのだ。
もし瑞鳳がこちらを向いていたとしても恐らくその目は今空を見つめるオレンジの瞳と同じ、焦点の合わないぼんやりとした形になっていただろう。
何故だかそう思えた。不思議とそう感じた。
821Res/614.71 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20