【鬼滅の刃】胡蝶しのぶ「双蝶求水」【義勇×しのぶ】
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◆K1k1KYRick
[sage]
2019/09/11(水) 07:38:24.01 ID:6LtJ1zmX0
最近姉さんの様子が少し引っかかる。
今日もまた、彼女は階級貴賤問わず関わる人たち全てから崇敬の眼差しを注がれている。
彼女もまた、彼らに笑顔を振りまき、勇気を残していく。
そんな彼女がある人物と居る時に限って、心底から打ち解けた
それこそ眩しいくらいの微笑を輝かせる。
冨岡義勇――寡黙だが将来有望な『水柱』。
数年前に最終選別で生き残って以来着々と実力を示し、柱まで昇り詰めた男。
鴉羽のような黒髪に、すっと通った鼻筋、雪解け水を思わせる怜悧な双瞳
眉目秀麗な青年である事は疑うべくもない。
だが寡黙が過ぎて何を考えて行動しているか解らない節があり
言葉足らずが誤解を招く事も多く、人付き合いは決して良い方ではない。
他の柱とも上手く行っている社交的な姉さんとはどこまでも対極にある存在だ。
だけど、あのむっつり然とした義勇さんと話している時の姉さんは本当に楽しそうで
昔一緒に遊んでいた時を思い出すくらい無邪気な笑顔を浮かべている。
しかし、行き交う人も一度は振り向くくらいの佳人と話しているのに
この朴念仁は嬉しいといった表情を一つもこぼさない。
姉さんがどうしてこんな人に明らかな好意を抱いているのか解らないが
二人の様子を見ているうちに私はどこか心が穏やかでなくなっていくようになった。
「ねぇ……しのぶは好きな人、いる?」
ある日、自室で薬学の研究書に目を通していると
縁側で猫と遊んでいた姉さんがそんな言葉を投げかけてきた。
恋の話を彼女としたのは意外かもしれないが、後にも先にもこれだけだった。
両親を殺され、鬼殺隊に入って以来、殺伐とした戦闘の会話ばかりを
していたと改めて感じたほどだ。
そんな人は居ないとすぐに返したが、彼女は柔和な笑みを浮かべて私を見ている。
何人をも魅了するその微笑みにはどことなく寂しい影が差しているように見えた。
「そう……『まだ』なのね、しのぶは」
「……?」
私は首を傾げざるを得なかった。
その時は「まだ恋をしていない」という程度の意味に取っていた。
……姉さんが、私の傍から居なくなる、あの日までは。
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2
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◆K1k1KYRick
[sage]
2019/09/11(水) 07:40:41.36 ID:6LtJ1zmX0
「姉さん!」
闇に光る雪道には、紅血の斑紋が所々に散っていた。
鬼の襲撃の報を受けた私は、雪を踏み散らして向かった。
そして、血漿の臭いの立ち込める凄惨な現場に倒れている姉さんの姿を見た。
以下略
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3
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◆K1k1KYRick
[sage]
2019/09/11(水) 07:41:30.86 ID:6LtJ1zmX0
大晦日に蝶屋敷の大掃除をしている時だった。
私はそれまであまり触れた事のない姉さんの私物を整理していた。
箪笥の二重底に隠すようにして、数冊の日記が見つかった。
それは姉さんが鬼殺隊に入隊してから命を落とす前の事が書かれていた。
死んでいった両親の無念を晴らすための決意、血の滲むような武芸の研鑽
以下略
AAS
4
:
◆K1k1KYRick
[sage]
2019/09/11(水) 07:42:40.12 ID:6LtJ1zmX0
「……」
皆が寝静まった夜闇、いつもと異なる黒色の羽織をひらつかせながら、私は水柱の屋敷に出向いた。
番人の隊士はあろうことか居眠りをしている。
いつもなら怒る所だけど今夜に限っては都合が良い。
以下略
AAS
5
:
◆K1k1KYRick
[sage]
2019/09/11(水) 07:43:08.31 ID:6LtJ1zmX0
蝶屋敷に戻ってきた私は、薬棚から数種の粉薬を取り出し
それに自ら庭で手折った藤にその種子を加えて擂り鉢にかけた。
擦り潰れて香りを放ちながら形を失っていく藤花に、私は姉への嫉妬と、自らの恋心を重ねた。
やがて抽出された藤の毒はいつもよりも美しくも恐ろしい香りを薄暗い部屋に漂わせている。
白湯の中に入れたそれを、喉奥へと流し込んだ。
以下略
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