お忘れください
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1:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 13:21:47.84 ID:N+cnZyL0O
僕は、とても老朽化したアパートに住んでいる。でもとってつけたようにエレベーターはついているから不思議だよな。
ある昼下がり、妹のサヨリと一緒にエレベーターにのることになった。
僕はバイトに行く途中だった。

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2:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 13:50:26.55 ID:BguiV92Q0
サヨリは友達と遊びに行く様で、いつもよりおめかしして高いヒールを履いていた。
でも昨日ひどい喧嘩をしたせいか、未だに一言も会話をしてくれていない。
しかしサヨリが上機嫌なのは、高そうな香水の匂いからなんとなくわかった。
僕らがのってしばらくして、急にエレベーターの下降が早くなった。電灯もチカチカしだし、明らかに普通の状況ではない。
エレベーターが『落ちて』いるのだ。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 13:53:03.99 ID:BguiV92Q0
ガタン、という大きな音がして、エレベーターは止まった。
体のあちこちが痛い。
『…サヨリ…?サヨリ!!…息はある』
サヨリは落ちたショックで気絶してしまったみたいだ。床に苦しそうな顔で伸びていた。
エレベーターの中は怖いくらいにシンと静まり返っている。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 13:54:07.63 ID:BguiV92Q0
『こ…こ…は …だ…い』
無機質な機械音声がかすかに聞こえた。
『こ……は …ださい』
押し続けているとだいぶクリアになってくる。
『この…は お…ください』
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 13:56:09.84 ID:BguiV92Q0
『このボタンのことは お忘れください』

『…え?』


6:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 13:56:56.73 ID:BguiV92Q0
そう言った。たしかに聞こえた。
え?おかしい。聞き間違いだろうか。

『このボタンのことはお忘れください』

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 13:59:09.99 ID:BguiV92Q0
『…あ、僕スマホ持ってたじゃん!!』
ふと尻ポケットの硬い存在を思い出し、119番に掛けようとキーパッドを開くが、手が震えてうまく打てない。くそ。たった3つなのに!!
僕はあまりにも震えがひどいので、隅に座って休むことにした。
サヨリは相変わらず床に突っ伏して動かない。


8:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 14:00:24.16 ID:BguiV92Q0
僕はバイトに行く途中だったんだ。時間になっても出社しなければ、誰かが心配して家に連絡をしてくれるはずだ。
サヨリだって待ち合わせをしていたみたいだし、相手も心配して何かしらの行動をとるはずだ…

僕は考え事をしているうちにウトウトし出した。


9:名無しNIPPER[saga]
2019/08/25(日) 14:01:24.82 ID:BguiV92Q0
『ってことがあったんですよ!ほんと怖くないですか!?いやぁその後なんとかなったとはいえ、生きた心地がしませんでしたよ〜』
ここは探偵事務所。応接室で正面に座った男は今日の依頼者だ。自分が乗っていたエレベーターが落ちたとかで、運営会社がちゃんと機能しているかを調べて欲しいとか。
『そうなんですか。大変でしたね』
俺は相当うんざりしていた。この男は途中から同じ話ばかり…


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