222: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/21(土) 11:30:12.03 ID:pQ00XHC/0
歌うように諳んじる青葉の口調は、どこまでも突き抜けていくほどあっけらかんとしていて、まるで彼女の言葉だけが重力から解放されているようだった。
どこを見て言っているのか。誰に向けて言っているのか。不明瞭なほど曖昧な言の葉。
「トラックも――」
「え?」
「や、や。なんでもありません。なんでも……」
そこでくるりと、踵を軸に一回転して見せる青葉。軽快なステップを踏み踏み、三叉路を私とは別方向、ドックへと向ける。
「そろそろ夜警が戻ってくる時間帯です。青葉、そっちに少し用があるので……今夜のことは、山城さん、あまりお気になさらず。引きずってもいいことはありませんよ」
「……ありがとう。わかっているわ」
わかっているのだけれど。
悔いて、嘆いて、人生を棒に振るとは言わないまでも、囚われて執着して、そんな生き方はしたくない。青葉の言うことは尤もだ。それでも、悔悟なしに幸せな人生は送れまい、とも思う。
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