193: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/08(日) 11:16:25.36 ID:d80kTEDO0
視界の中では青葉が夕立と交渉していた。「もう少し」だとか「そこをなんとか」だとか聞こえてくる。大方鎮首府の中の写真をどれだけ、どこまで撮ってもいいかを確認しているのだろう。
誰もが幸せになりたいのだ。なりたがっている。けれど、希求……そう、希求だ。希う。あるいは恋のように、激しく燃え盛る心の火炎を宿す人間が、どれほどいるか。
たとえばいま盛り上がっている青葉と夕立、彼女たちにも彼女たちなりの幸せのかたちがあって、それを求めているはずだ。果たしてその恋は身を焼き焦がすほどなのか。
手のひらの暖かさを感じる。
たいよう。
「あなたは幸せになりたいと思う?」
「えっ?」
素っ頓狂な声。当たり前か。
ごめんなさい、変なことを訊いたわ。そう返すのが自然で理想だった。しかしなぜだか私はそうせずに、
「幸せよ」
と念を押してしまう。
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