15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/08/21(水) 01:26:38.37 ID:zqrS27Hw0
声が出なかったのは、きっと体の傷が原因のすべてではない。
私は別段、自分が一般常識に欠けているとは思わなかった。それでも、たったいま目の前の女性、大淀と名乗った彼女が口にした単語――いや、そもそも単語なのかすら定かではない――言葉の羅列は、私の知識の中にはなかった。
CSAR。ARS。恐らく、何か英単語の頭文字なのだろう略し方という類推はできても、それまでである。
誇らしげに大淀は胸を張っていた。たった今口にしたその文字に、自らの威信と誇りを委ねているという態度のようにすら見えた。
「通じてねぇようだが」
それみたことか。男性のニュアンスは皮肉交じり。
大淀はそれを受けて小さく呟いた。なるほど。なにが「なるほど」であるのか私にはちっとも理解ができなかったけれど、彼女は納得したらしい。
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