【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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2: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:16:45.34 ID:oj63shz20

   ◇

 実際のところ、夏葉がアイドルを引退したのは三週間ほど前のことだった。今月の頭――関東が梅雨入りする直前だったか――にユニットの解散ライブを行い、惜しまれつつも、約九年間のアイドル活動に幕を引いた。

 俺と夏葉との関係は、いまだプロデューサーとアイドルのままだった。書類上の話だ。夏葉と事務所の契約は月末まで。この六月いっぱいは、形骸化したとはいえ、その関係が維持されることになっている。

「遅めのモラトリアムかしらね」
 夏葉は現状を浮かない顔でそう評していた。俺はそれを「らしくない」とも思ったが同時に、「仕方がない」とも思っていた。

 やれ『トップアイドル』だの『いま一番勢いのあるプロデューサー』だの、そう持て囃されていた三週間より以前ことが、もうずいぶんと昔のことのように感じられる。
 
 夏葉がアイドルとしての活動を終えて、二人のスケジュール帳には空白が目立つようになった。端的に言えば、俺たちは急激な変化に戸惑っていたのだろう。慌ただしくも明確だった日常から放り出され、時間的なもの以上に、何か精力的なものを持て余していた。
 
 そして、そういった変化に対するある種の必然として、俺は夏葉と出かけることが増えた。
 夏葉は「六月の間は」と言って事務所に顔を出す。俺は一時的に仕事が減っている。夏葉は海を見るのが好きだ。俺は夏葉との時間が好きだ。だから、必然だ。

 頻度にして三日に一回、さしたる目的もなく、俺と夏葉は海を見に行った。海に行く途中で、色んな寄り道をして、二人の時間を楽しんでいた。見ようによっては『デート』だと言えたかもしれない。

 ――今日だって、そういった日のひとつにすぎないはずだった。

 いつも通りだった。昼前に事務所で待ち合わせて、二人で相談して目的地を決めて、ゆるりとドライブを楽しむ。何も変わらない。
 脈絡もなかった。取り留めのない話をした。懐かしい話をした。二番目のアルバムのことだとか、メンバーの高校卒業を祝った時のことだとか。差し障りのない話を色々と。
 それでいて唐突だった。話の切れ目に、夏葉の横顔がちらりと見えた時に、俺は言った。

「なあ、夏葉。結婚しないか」


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