魔女「……大人、勃ち?」竜の子「ほえ?」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/22(月) 23:32:23.71 ID:lIL3ZnEMO
「……だい、じょうぶ?」

生贄娘に気持ち悪いことを言われて再び込み上げてきた嘔吐感に苛まれた可哀想な竜の子のことを不憫に思ったのか、甲板でその様子を見つめていた黒ずくめの少女が小さく声をかけた。
胸元に束ねて垂らした漆黒の黒髪と線の細さが印象的な人間だった。

「え? えっと……その……」

人間に声をかけられることに慣れていない竜の子は思わぬことに狼狽え、とりあえず謝った。

「あ、あの……ご、ごめんなさい」
「……どうして、謝るの?」
「き、汚いものを、見せちゃったから」

そう言って、恥じ入るように肩を竦める竜の子を見て、黒ずくめの少女は好感を持った。
もちろん彼女はフードを被った子供の正体に気づいてはおらず、小さな子供が船に酔った姿があまりに気の毒だったので、声をかけてみたにに過ぎない。
そしてそんな弱り切った子供が周りの船客に気を遣うその健気さに胸を打たれ、話を続けた。

「……船は、初めて?」
「あ、はい……だから、酔っちゃって」
「……少し、じっとしていて」

そう言って、おもむろに白く透き通るような肌をした手のひらを竜の子の背中に伸ばして。

「待ちなさい」

静観していた生贄娘に、細い手首を掴まれた。

「……何?」
「それはこちらの台詞です。若様に今、あなたが何をしようとしたのか、答えてください」
「……あなたはこの子の、何?」
「僭越ながらご両親より道中のお世話を任され、現在保護者を務めさせて頂いております」
「……そう。なら、引っ込んでて」
「??」

生贄娘と黒ずくめの少女の会話は成り立っているようで成り立っておらず、船酔いで頭の回らない竜の子にはさっぱり理解不能だった。


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