【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 02:00:55.67 ID:GuzBXgUxO


「プロデューサーさん、ちょっと相談があるんだけどさ――」


 とある芸能事務所、そこに所属する一人のアイドル――木村夏樹は、彼女を担当するプロデューサーへ遠慮がちに切り出した。


 ロックなアイドルを信条・コンセプトとし今を駆け抜ける夏樹。
 純粋、清廉、無垢で可愛らしい……そのような従来のアイドルイメージとは対極にある彼女であるが、そんな形にとらわれない「かっこいいアイドル」は社会に鮮烈な印象を刻み込み、今や男性はもとより、同性である女性からの支持も厚い。


 前髪をたくし上げ、いわゆるリーゼントのような髪型をしていることも相まって、夏樹というアイドルは今や若者の憧れであり、一種のアイコンになっている。


 そんな彼女であるが、いつもの明朗快活な性格は鳴りを潜め、何やら葛藤の中にいるような面持ちであった。


「……相談? どうした?」


 初夏の太陽は眩しく、高い空には雲ひとつない。事務所のクーラーが冷気を吐き出す音、それだけが響いている。


「スケジュールのことで相談があってさ」
「何だ、そんなことか」


 いつもらしくない夏樹を見て、何を切り出されるのか――そのように身構えていたプロデューサーであったが、何気ない相談であったことに安堵のため息を漏らす。


「……スケジュールか。休みが欲しいとか?」


 地道な下積みを経てアイドルとしてデビューし、デビュー間もなく注目を集め忙しい日々を送ってきた数年間。駆け足のように過ぎる目まぐるしい時間はようやく落ち着き、これからの戦略を再構築する時期に入っていた。


 プロデューサーにとってはこれまでの労をねぎらう意味も込めて、スケジュールに余裕を持たせようと思っていたところであった。


「いや、その逆っていうか……」


 ところが、彼女から返ってきたのはその逆。意表を突かれる。


「……え?」
「いや、もっと仕事を入れて欲しいんだ」

 まさかの提案に呆然とするプロデューサー。
 まさか、俺のやり方に不満があるのでは――彼の脳裏に一抹の不安が過ぎる。






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