サカキ「少し席を外させて貰う」ミュウツー「どこへいくつもりだ?」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/13(土) 22:03:52.45 ID:MAkUBpd1O
「ご主人様、こちらです」
「ああ」

その日、私は久しぶりに人間の街へと赴いた。
とはいえこの姿では目立つので赤い帽子を目深に被り、人間の服に袖を通して変装している。
何かと便利なポケモンセンターに勤務するジョーイに催眠術をかけ、目的地まで案内させた。

「随分と賑わっているな」
「ご主人様の映画なのですから、当然です」

そう、私がわざわざ人間の街に足を運んだのは、自身が出演する映画を鑑賞する為だった。
その望みを果たすべく甲斐甲斐しくチケットを購入してくれたジョーイの案内に従い、指定されたスクリーン最奥の中央付近の席に着く。

ジョーイ曰く、映画を観る際、最前列だとスクリーンを見上げる姿勢となる為、最奥の中央から鑑賞するのが望ましい、とのことだった。
しかし、残念ながら私の席は最奥の中央付近であり、真ん中の席からはひとつズレていた。
先に座席を予約した者に、席を奪われた形だ。

「申し訳ありません、ご主人様。私が遅きに失したばかりに、最上のお席をご用意出来ず……」
「よい。一席ずれた程度、微塵も問題ない」

心底申し訳なさそうに謝罪をして、深々と頭を下げるジョーイに対し、自らの寛大さを示して赦しを与えると、彼女は嬉しそうに破顔した。

「ありがとうございます、ご主人様」
「お前のおかげで映画館に来ることが出来たのだ。礼を言うのは、むしろこちらのほうだ」
「身に余るお言葉、恐悦至極でございます」

そんなやり取りをしながら、ふと思う。
この私が人間に礼を言う日が来るとは。
自分も丸くなったものだと、感慨に耽った。


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