「ポケモンを診るということ」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/10(水) 16:17:30.17 ID:0Uy9Zr1OO

僕はデンリュウをうつぶせにして、浮き出た脊椎を指でなぞる。
背骨の両側に『電嚢』という小さな板状の器官が、板同士をくっつけるようにして長く続いているのだ。

身体全体でみると、頭側がプラス、尻尾側がマイナス。
プラスルやマイナンがいる病院なら針も刺さずに治療が可能なのだけれど、今日はでんきタイプのポケモンが常時待機している日ではなかった。

「じゃあ、少しデンリュウを押さえていて」
「はいっ」

ジョーイさんもゴム手袋をつけ、デンリュウの両手を上から押さえた。
足の方には長い絶縁体バンドを巻き付け、暴れないようにしている。

電嚢穿刺は、この板状の器官に2本の針を刺し、そこから溜まったでんきを身体の外に流してやることで治療する方法だ。
局所麻酔をしてから行うため痛みは少ないが、『針で刺される』こと自体の恐怖心も強い。

「じっとしててね」

僕はデンリュウの背中に手を当てた。
ジョーイさんから電嚢穿刺に使用する針を受け取る。

針は1本目がプラス、2本目がマイナスの導線につながっていて、その先には蓄電器のような機械がつながれている。

「ヴヴヴ……」

デンリュウが機械を見て低いうなり声をあげ、僕は背中をさすった。
怖いだろうけど、穿刺後にはすぐに症状が改善するのが電嚢穿刺のいいところだ。

「じゃあ、やります」

麻酔を効かせた後、位置を確かめながらゆっくりと針を進めていく。
針は2pほど進んだところで『パチっ』と音を出した。

電嚢に入った証拠だ。

「もう1本」

受け取って、今針を刺した場所の隣を狙って、2本目の針を刺していく。
針はもう一度『バチッ』と言って、ずっと身体を強張らせていたデンリュウの力が、すうっと抜けるのが分かった。



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