【たぬき】依田芳乃「よよよよよりた」
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26: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/04(木) 00:19:38.83 ID:AHfhRj3X0

   ○


 あれはうちの部署が稼働しだして間もない、春の盛り。
 当初、うちに所属するのは楓さん一人。それに俺とちひろさんとの三人体勢で、毎日あれやこれやしているところだった。
 
 ある日、事務所に内線が来た。

 どうもフロントに客人が来ているらしい。
 俺に会いに来たとのことだったが、アポは当然なし。何か急ぎの用事も、お叱りを受けるようなことをした覚えもない。

 はてどうしたものか――考えながらロビーに降りると、彼女はそこに立っていた。


「やはり、そなたでしたかー」


 海と花の香りがする、着物姿の少女。
 オフィス街ど真ん中の芸能ビルには到底似合わぬ佇まいだ。
 年の頃は15、16くらいだろうか……日本人形のように可愛らしい姿からは、しかし樹齢数千の老木を思わせる不思議な落ち着きがあった。




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