7:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:07:58.61 ID:j/IZGaDe0
「そんな事ないですよ〜!やだな〜千早さんってば〜」
「え、でも──」
8:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:09:04.50 ID:j/IZGaDe0
───────────────────side:如月 千早
薄々気付いていた。戻ってきた時の、そして目の前に佇む彼女の様子が少しおかしいということには。
9:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:09:44.97 ID:j/IZGaDe0
そうして気づく。
『春日未来』は、みんなが思うよりもずっと強くて──そして、ずっと弱いのではないか。“みんなが求める笑顔の未来”という固い殻の中で、少しずつ傷つき泣いているのではないか、と。
10:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:22:05.43 ID:j/IZGaDe0
───────────────────side:春日 未来
「──それは嘘ね」
11:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:24:07.34 ID:j/IZGaDe0
ともかく、そうして私は話し始めた。
「実は今日、テレビの生放送に出たんです。夕方の番組の、ちょっとしたコーナーなんですけど、基本私一人でロケをやることになってて。『アイドルがぷらっと訪問!』っていうコーナーなんですけど、その今月の担当パーソナリティーに選んでもらってて」
12:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:24:58.39 ID:j/IZGaDe0
「今日のことで私が怒られるのって、当たり前じゃないですか。こわして迷惑かけちゃったんですから、しかも三回も連続で……でも、私のせいでプロデューサーさんまですっごく怒られちゃって、色んな人にあやまりに行ってくれて」
それでも今日の失敗をしゃべる。イヤな事も、つらい思いも全部。何かがこみ上げてくるのを必死に抑えながら、全部しゃべった。
13:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:40:30.94 ID:j/IZGaDe0
「でも、結局私一人じゃあダメだったんです。私一人だけじゃ、本当に全然……それで、気付いたんです」
「翼みたいな才能も、杏奈みたいな思い切りの良さも、静香ちゃんみたいなアイドルへの強い想いも……な〜んにもない私なんかが、アイドルしててもいいのかな」
14:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:42:06.07 ID:j/IZGaDe0
───────────────────side:如月 千早
そうか、やっぱりそういうことだったのか。
未来の告白を聞いて、ようやく合点がいった。自分一人だけのことなら、こんなにも弱気にはならない、なるはずがない。私が見てきた未来は、そんな娘ではない。いつもなら三十分ほどで戻ってくると、青羽さんも言っていたではないか。
15:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:48:31.01 ID:j/IZGaDe0
───────────────────side:春日 未来
私のごめんなさいを聞いた千早さんは、何秒かかけてゆっくりと瞬きをした後、私をまっすぐに見つめてこう言った。
16:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:49:49.92 ID:j/IZGaDe0
「──でもね、それだけが全てではないの」
耳元で聞こえた囁き。きゅっと、あたたかい感触が私を包んだ。
千早さんが、後ろから抱きしめてくれたんだ。
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