16:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:49:49.92 ID:j/IZGaDe0
「──でもね、それだけが全てではないの」
耳元で聞こえた囁き。きゅっと、あたたかい感触が私を包んだ。
千早さんが、後ろから抱きしめてくれたんだ。
17:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:50:51.48 ID:j/IZGaDe0
「私がアイドルになったばかりの頃は、それはもう酷かったわ。愛想は悪いし、トークは下手だし、笑顔一つだって満足にできなくて。そのくせ妙なプライドだけは一人前で」
「水着の撮影が気に食わなくてカメラマンを睨み付けて帰らせてしまった事もあったし、歌の出来栄えに納得できなくて思い切り駄々をこねた事もあったわ。『私が納得いくまでスタジオの使用時間を延長してください、叩かれたって動きません』って」
18:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:52:14.24 ID:j/IZGaDe0
「それに、今日のミスだって手を抜いたから起きたというものじゃないんでしょう? ちょっと頑張り過ぎたというか、挽回しようとやる気が空回りしてしまったというか……きっとそういう類いのものだと思うの」
「は、はいっ!私、手を抜いたりなんてしてません!」
19:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:52:47.58 ID:j/IZGaDe0
でもそれを千早さんは誤解しちゃったみたい。
「──ごめんなさい。いきなりこんなお説教みたいな真似をしてしまって……私らしくなかったわよね」
20:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:55:58.79 ID:j/IZGaDe0
───────────────────side:如月 千早
またやってしまった。いつもこうだ。
私のやることはいつも誰かを傷つける。遠巻きに拒絶するのかそれとも無遠慮に踏み込むのか──今回はそれが後者だったという話だ。
21:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:56:36.80 ID:j/IZGaDe0
もともと未来のことは、出逢った当初から気にはなっていた。
その笑顔が誰かに似ていると感じたから。はっきりとわかるレベルではない、淡いデジャヴのようなものだ。けれど私は、確かにそう感じたのだ。
初めはそれを春香だと思っていた。人を惹き付けてやまないその笑顔が、私の“いちばんのともだち”にそっくりなのだと。
22:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:57:37.74 ID:j/IZGaDe0
漠然とだけれど──未来は“私”は似ている。何かきっかけがあったという訳ではない。いつの間にかそう思うようになっていた。
もちろん“今の私”にではない。父がいて母がいて、そしてあの子がいて──『この幸せな日々がいつまでも続いていくのだ』と無邪気に信じていた、昔の私によく似ていると。そう思うようになっていた。
23:名無しNIPPER[saga]
2019/07/02(火) 00:00:54.85 ID:ndUIllUw0
───────────────────side:春日 未来
「あ、あの! 千早さん! 待ってください!」
24:名無しNIPPER[saga]
2019/07/02(火) 00:01:55.16 ID:ndUIllUw0
「あの、千早さん!聞いてください……私の、正直な気持ちを!」
あえて千早さんの方は──後ろは見ない。まっすぐ前を見て、目の前に広がる光の海に誓うんだ!
25:名無しNIPPER[saga]
2019/07/02(火) 00:10:47.13 ID:ndUIllUw0
「……ふふ。うん、それでこそ“春日未来”ね」
「で、でへへ〜そうですか〜?……ありがとうございます!」
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