10:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:50:00.33 ID:lCVrPTby0
「そうね。たとえば、スプーン曲げ、とか」
「えーっと、それは手品的なやつ、ってことですか?」
なるほど。ムギセンパイはさいきん手品にハマってる、というわけか。
11:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:51:35.83 ID:lCVrPTby0
琴吹家に生まれた女の子は、17歳になると超能力が発現する。
ムギセンパイのお母さんもおばあさんも、ひいおばあさんもそのまたおばあさんも、みんなそうだった。
ただしそれは18歳になると失われる。一年間限定の力。
超能力といっても、力には制限がある。
12:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:52:17.49 ID:lCVrPTby0
ムギセンパイにできるのはスプーン曲げ=B
実際に見せたほうが早いかしら。ムギセンパイがポケットからスプーンを取り出した。
どうしてそこからスプーンが? 疑問を封じ込めたまま触らせてもらう。
特におかしなところはない。何の変哲もないよくある銀のスプーンだ。お店のじゃなくて、わたしのだから大丈夫、と注釈をつける。スプーンを持ち歩いてるのか、このひと。
13:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:53:53.50 ID:lCVrPTby0
「梓ちゃん。よく見ててね」
ムギセンパイは左手にスプーンの柄の端を持ち、右手の親指と人差し指でスプーンの首もとをつまむと、ゆっくりと擦りだした。
私はセンパイの手元をじっと見つめた。
14:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:54:27.33 ID:lCVrPTby0
何も起こらないまま、静かに呼吸だけが続く。
しばらくしてムギセンパイが大きく息を吸い込んだ。
15:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:55:32.12 ID:lCVrPTby0
右手をスプーンから離し、左手を左右に振る。
スプーンが揺れる。
スプーンの頭はぐにゃぐにゃと左右に傾げる。
16:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:56:10.92 ID:lCVrPTby0
揺れは次第に大きくなってゆく。
まるで飴細工だ。
17:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:56:59.86 ID:lCVrPTby0
センパイが、えいっ、と掛け声をかけた。
18:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:57:34.57 ID:lCVrPTby0
スプーンは柄の部分からぽっきりと折れ、乾いた音を立ててテーブルに落ちた。
私は口をぱくぱくさせながら、ただ呆然としていた。
19:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:58:33.46 ID:lCVrPTby0
超能力の話の続き。
超能力を使わないでいると、身体の中に余計なエネルギーが溜まってしまう。
ムギセンパイ曰く、おなかの下のほうがムズムズするっていうか、ムラムラするっていうか、気持ち悪くてたまらないらしい。
だから定期的に発散する必要がある。排便みたいなものね。とムギセンパイは言う。例えが悪すぎる。
20:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 21:59:23.49 ID:lCVrPTby0
「他のセンパイ方には見せたんですか?」
ムギセンパイは首を横に振った。
「どうしてです? 今度部室でやってみせてほしいです!」
49Res/26.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20