35: ◆OtiAGlay2E[sage]
2019/06/24(月) 04:04:02.31 ID:v/g2u2sn0
「いいのか坊主?」
隣にいた八百屋のおじさんが僕のことを気遣ってか聞いてくる。いつになく真剣な顔だった。
なにについてかは聞かなくてもわかる。
「ええ。佐竹さんが決めたなら僕は応援します」
「そうか……ま、いい経験したな坊主。にしても佐竹ちゃんがアイドルか。この店も寂しくなるな……」
おじさんは寂しそうにつぶやくと、それ以上何も言ってこなかった。
こうして、ひとめぼれから始まった僕の初恋は、ついに実ることなくおわりを迎えた。
その話題もそこそこに、佐竹さんを取り囲んでいた輪はバラけ、それぞれが定位置と言ってもいい席に戻っていった。佐竹さんは事務所にあいさつに行くと言ってそのまま出て行ってしまった。
僕はやっとあいたカウンター席に腰を下ろして注文をする。今日注文するものはもう決めた。
「すみません、チャーハンひとつ、大盛で」
その日、僕は初めて佐竹飯店で大盛を頼んだ。
出てきた大盛チャーハンはいつものチャーハンよりふたまわりは大きい山だった。
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