【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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89: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/18(火) 23:50:00.64 ID:BLRBsoCc0

 気付けば高垣さんと柊さんがこっちを見ていた。

「な、なんですか」
「『どこかで会ったか』……なんて、ずいぶん古典的な手を使うのね?」
「移り気な人ですね。そんなだと、これからクロうしますよ……ふふっ」

 さっそく人のあだ名をダジャレに使われた。
 なにやら急にばつが悪くなって、むっつりとコーヒーを啜る。
 マシになったとはいえまだまだ酔っている。そんな男一人をよそに、二人はまた新たなグラスを手に取った。

「……話はわかったわ。ここは私の庭だもの。ここで起きることに、何の心配もいらないわよ」
「ありがとうございます。やっぱり、志乃さんと話していると安心します」

 俺がくたばっている間に大事な話をしていたのだろうか。
 どのみち知る由もないのだが。



「代わり、といってはなんだけれど」

 グラスの中にワインを転がし、柊さんはひとつ提案する。


「久しぶりに、楓ちゃんの歌が聴きたいわ」
 




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