【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
1- 20
79: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/18(火) 23:34:14.32 ID:BLRBsoCc0

   〇


「カナリヤさんっ」


 と、声がかかる。

 次に出会ったのは、ゆるゆるでふわっとした感じの女の子。
 色とりどりの出店の中で、彼女の店は一段と質素だった。

 小さなグリーンのレジャーシートに、花飾りを施した籠バッグ。細部まで行き届いた手作りのディスプレイ。

 並んでいるのは、小さなフレームに綴じられた写真の数々だ。

「あら、写真屋さん。今夜はお店を出していたのですね」
「ええ、なんだか良いことが起こるような気がして……」

 トイカメラを使ったようで、写真自体はチープなものだが、その一枚一枚に不思議な魅力があった。
 路地裏、空、電柱、菜の花畑、小さな黒猫、ピースサインの子供たち……それぞれが本物のような空気感を秘めている。

 まるで彼女が出会った瞬間を、そのまま切り取って持ってきたかのような。

 その中心で、彼女の笑顔は陽だまりのようだ。
 見たところ女子高生くらいだろうか。ずっと年下のはずだが、えもいわれぬ安心感と包容力をもたらしてくれる。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
328Res/204.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice