【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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46: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/14(金) 23:30:50.56 ID:DTY4fa360

 スキャンダルがあったわけではない。担当アイドルたちとの関係も良好だった。
 彼らは一丸となり努力して、努力して、努力して、努力して、それでもなお、届かなかった。

 ただただ、単純に「負けた」のだ。

 時勢の要因もあるにはあるだろう。
 小さな事務所がお互い喰い合う世紀末状態だったものだから、昔は今よりもっと過酷で、みんなギラギラしていた。

 ライバル事務所はどこも手段を選ばず、表だっては言えないようなことをしてまでのし上がろうとしたらしい。
 ただまっすぐ進むだけでは、目指す場所はどうしても遠すぎたのだ。

 だが言い訳にはならない。

 ライバル事務所のやり口が悪だとも思わない。弱肉強食こそ芸能界の基本原理だ。
 今日の業界は、そのようにして倒れた幾多の者たちの屍の上に成り立っていると言っていい。
 親父のプロダクションも、そうした並び立つ墓標の一つとなっただけの話だ。

 プロジェクト解散からほどなくして会社が倒産し、一家は東京から父方の地元へ帰った。




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