【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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182: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/27(土) 16:23:56.24 ID:aiDwMVos0

  ◆◆◆◆


「それからというもの、高垣の家には双子が生まれるようになります」


 俺の頬に両手を添え、寝物語のように紡がれる言葉の数々は、まるで実話とは思えないものだった。
 だが彼女が話しているのは、遠い昔話ではない。彼女自身と地続きの「今」の話だ。

「五十年に一度、あるいは百年に一度……。不定期ですが、決まって『娘』が。
 その度に、同じ場所へ参り、片方を贄とします。姉妹が七つになる前に」


 ――楓ちゃんは人間よ。私が保障するわ。

 ――彼女は人の身ながら人の手に余る。神業、あるいは魔性のそれよ。

 柊さんの言葉が脳裏に蘇る。
 荒唐無稽と誰が切り捨てられるだろうか。この目で見たことが、すべて嘘偽りない真実だ。


「七つで消えた彼女の名は、樒(しきみ)といいます。
 歌が上手で、明るくて、いつも私を引っ張ってくれる……自慢の姉でした」




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