【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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134: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/07(日) 22:39:43.78 ID:BmYrOlBS0

 幼子を諭すような、ひどく淡々とした口調。
 落ち着き払った彼女の姿に、似ても似つかぬ男の顔がダブる。

 同じような語り口で、同じようなことを言ったあいつの顔が。

「それは……ただの、諦めでしょう」

 十年前の古傷から、血の滲むような呪詛が漏れる。 

「諦めは悪いことではないわ。少なくとも、しがらみを振り払って、前へ進むひとつの契機にはなる」
「そんなのは詭弁だ!」

 がたんっ!

 蹴倒した椅子が地面に転がる。倒れる音が存外に大きく響いたが、気付きもしない。
 周囲の客も、こちらを見守るマスターも、冷たい目をした眼前の柊さんさえも、俺には気にする余裕が無い。

「居場所なんてどうにでもなるでしょう!? 能力さえあればそんなものいくらでもついてくる! わからないんですか!?」




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