254: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:24:22.89 ID:Bg3Eqo0s0
もう少しの間だけでも触れていたかったが、差し迫る時間は待ってはくれない。
仕方ないと割り切って、もともと入っていた場所に戻そうと、このみは手を動かした。
けれど、その手を引きとめるみたいに、このみの胸の中で声がした。
『私のステージ、ここからちゃんと見ててね。』
聞こえてきたのは、少し前に自分が言ったばかりの言葉だった。
きっとあの言葉は、彼だけに伝えたかった言葉ではなかったのだ。
『私の道を、ずっと近くで応援してくれた人』。
それは、劇場の仲間たちや、ファンの子たち、そして……。
「そうよね、あなたも……。」
胸の前に引き寄せて、このみはブレスレットを見つめて、呟いた。
そっと微笑んで、マイクケースのクッションの上に、優しくそっと置いた。
「ここから、私のこと見ててくれる?」
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