252: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 00:21:23.28 ID:Bg3Eqo0s0
このみは、持ち込んだ資料で自分のステージの段取りを確認した後、机の上にある棚をそっと開けた。
そして、たった一つ、ブレスレットを取り出して、それを左手の上に乗せた。
何の変哲もない透明なガラス玉がついた、シンプルなものだった。
決して高価なものではないし、むしろアイドルがステージで付けるアクセサリとしては、いささか粗末なものだった。
しかしこのみにとっては、アイドルを始めた頃からずっと大事な日に着けてきた、大切なブレスレットだった。
今ではじりじりと照り付けるステージライトにすっかり焼けてしまったらしく、留め具の色は少し白っぽく変わってしまっていた。
長く使ってきたからなのか、ガラス玉の部分も指で押すとぐらぐらと揺れて、ともすれば外れてしまいそうになる。
このみはいつも、このブレスレットから勇気をもらってきた。
初めてアイドルとしてステージに立った時も、765プロの代表の一人として劇場の外で何万人の前で歌った時も──。
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