エミリーが忘れた日
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5: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:10:40.40 ID:9pdDfgPfo
 
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きっとエミリーは幼い頃から、劇場の誰もが思い及びすらしない血の滲むような努力を重ねてきたに違いない。

日本への憧れその一心で故郷を離れこの東洋の国へやってきた十三歳の女の子。
彼女は出会ったときからこの国の文化に人一倍詳しかったし、またその知識欲も並の日本人など相手にならないだろう。
カタカナすら一切話したがらないという、異常なまでの日本語へのこだわりがあったこともよく分かっている。
それはおそらくエミリーが憧れの大和撫子を目指すにあたっての最大のコンプレックスである、国籍という壁を少しでも打ち破るための手段。
彼女にとって、俺たちと同じ言葉を話すということは単なるコミュニケーションの道具なんかではなかったはずだ。

そんな、彼女が自身を大和撫子たらしめる最大の拠り所が失われてしまったとしたら――?

翌日、765プロの事務所にエミリーを連れてきた俺は社長室で経緯をできるだけ詳細に説明していった。
音無さんと青羽さん含め、三人にはすでに報告済みではあったがやはり改めて話さなければいけない。
場合によっては――彼女の今後すらも。
俺は話し合いの際、エミリー本人も同室にいさせた。
もちろん聞かせたくない話であったし、俺たちの会話が理解されないという状況を利用するようで自分でも吐き気のする選択だったが、
まだ彼女を一人放っておきたくはなかったから。


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