2: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:16:05.09 ID:kcSV+mvpO
── 冬 ──
「ふふ、中々悪くない一日だったなー」
隣を歩く周子がそう呟く。仄かに潤んだ瞳をゆっくり閉じて、満足そうに深呼吸した。
彼女のアルコール混じりの吐息は一瞬白く柔らかい形を作り、冬の空気に溶けていった。
それをぼんやり目で追ってから、俺は馬鹿丁寧にお辞儀する。
「それは大変よろしゅう御座いましたぁ」
「うんうん。くるしゅうないよ!」
周子は胸を反らして目を細めていた。
深い夜の帰り道。街路樹の向こうにベテルギウスが浮かんでいる。繁華街から離れ、人がまばらになるにつれて、空は益々澄んでいくようだった。
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