13: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:22:42.28 ID:kcSV+mvpO
コンビニの明かりがやけに眩しく感じた。安っぽい出汁の匂いがしてぼんやりと思う。もうそろそろ、おでんも見なくなる時期だなあ。
店内には菜々さんの新曲が流れていた。十七歳の菜々さんと、二十歳の周子。彼女達の年齢は少しずつ離れていく。そう考えると何だかおかしい。
14: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:23:20.42 ID:kcSV+mvpO
「……ん? なぁに?」
「欲しい物あるからって、毎度媚売らなくていいんだからな。最初から素直に言え」
15: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:23:59.07 ID:kcSV+mvpO
「んー……期間限定って惹かれるなぁ。でもやっぱ雪見だいふくも……」
ショーケースを覗き込んで、周子が唸っていた。その横で俺も一緒になってアイスを眺める。
16: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:24:31.64 ID:kcSV+mvpO
周子の言葉の意味が分からず、俺はきょとんとしてしまう。話題がすぐにあっちこっちと飛び回る俺達の会話は、稀にこんなことがあった。
「は? 何がだ?」
17: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:25:03.30 ID:kcSV+mvpO
「あー……それはどうも」
「Pさんはどうなん」
18: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:25:40.31 ID:kcSV+mvpO
「嫌いなわけないだろ」
「ほんと?」
19: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:26:18.40 ID:kcSV+mvpO
コンビニを出た俺達は公園に足を踏み入れていた。数ヶ月前と同じように、時計はぽつねんと立っている。
日付の変わったばかりの砂場には、人っ子一人いなかった。
20: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:26:49.25 ID:kcSV+mvpO
周子がアイスを食べ終えて、そのゴミまでしっかり俺に手渡してきた直後のこと。彼女は突然大声を出した。
「あーっ!!」
21: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:27:16.16 ID:kcSV+mvpO
より正確に言うと、ブランコは修繕されたようだった。所々錆の付いていた支柱は青いペンキで塗り直され、座面へ繋がる鎖は新しいものに取り替えられていた。
まだ修理して間もないのだろうか。あまりに鮮やかな青色の遊具は、この公園の中で少し浮いているようにさえ見えた。
22: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:27:44.67 ID:kcSV+mvpO
「この年になって遊具を使うとはなぁ」
「んはははっ! ええやん、何か哀愁感じるよ?」
23: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:28:14.74 ID:kcSV+mvpO
しばらくの間ゆらゆらとブランコを漕いでいた周子はぴたりと止まり、口を開いた。
「大人になるとさぁ、出来なくなることが増えるよねー」
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