高垣楓「風向き良し」
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8:名無しNIPPER[saga]
2019/05/05(日) 00:29:29.65 ID:OWpqcD6m0

準備を終えたスタッフさん達に呼ばれ、楓さんが緩く手を振り返す。
俺も手元の進行表を見直しながら彼らの元へと向かった。


 「……ん?」

ところが隣に楓さんの姿は無く。
振り返ってみれば、彼女はチャペルの入口近くにぽつんと立ち尽くしていた。

 「楓さん? どうかしましたか?」

呼びかけながら歩み寄ると、楓さんは相も変わらず微笑んでいた。
裾を踏んづけないギリギリまで近付くと、
ウェディンググローブに包まれた細い手をそっと俺へと伸ばしてくる。

 「裾を踏んでしまいそうで。上手く歩けないんです」

 「……」

 「ので、よろしくお願いします。プロデューサー」


 以前もクリノリン入りのドレス、着てましたよね。
 ゆっくり歩けば大丈夫ですよ。
 そもそも更衣室から歩いて来てませんでしたか。


数々の反論が胸の中を渦巻いて、その全てが差し出された白い手に抑え込まれた。
背後からは催促の声が飛んで来ず、
代わりにと投げ込まれる視線が俺の身体にぶすぶすと突き刺さる。
スラックスで右手を一度だけ拭い、指先に触れた。


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