6:名無しNIPPER[saga]
2019/05/04(土) 23:54:57.26 ID:lX2r1nsd0
◇ ◇ ◆
チャペルと聞いてイメージしていたよりも随分と落ち着いていた。
式場と言うよりは本来の礼拝堂と言った方が近いのかもしれない。
並ぶ椅子たちは過ごしてきた年月を語るかのような焦げ色で、
正面には天井まで届くステンドグラスが何枚も嵌め込まれていた。
流石はマイスターの国。溜息が出そうだ。
それぞれのガラスには書物や杖を抱えた偉人らしき方々が描かれていて、
蘭子ちゃんが好きそうだなと考え出した時だった。
ぎぃ、と入り口の扉が押し開かれて、担当アイドルがゆっくりと姿を現す。
服飾には全く詳しくないが、取り立てて変わった所の無い、ごく質素なウェディングドレスだった。
しかしそのデザイン故か、どこか荘厳さを感じさせるこのチャペルへ自然に溶け込んで見える。
そう在るのが当然のように、彼女はこの上なく特別な服を、手慣れた様子で翻していた。
次いで現れた衣装さんやカメラさんの姿を見て、
ようやく俺は撮影に訪れていたのだと思い出す。
照明や器具を組み立て始めた彼らを背に、楓さんは俺に微笑みかけてくれた。
どうしてだか少し照れくさくなって、軽い会釈を彼女に返した。
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