【たぬき】神谷奈緒「あたしの髪には何かが棲んでいる」
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60: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/04/17(水) 01:36:04.99 ID:n5WgkvMD0


「奈緒っ!!」


 いきなり上に引っ張られて、左肩が抜けそうになった。
 
「え……!?」

 見上げると、プロデューサーさんの必死な表情。
 今度は彼が欄干から乗り出して、限界のところであたしの手を掴んでくれていた。
 助けてくれた。
 助けてくれた。
 あたしのために危険を承知で、自分だって落ちそうなのに。

 ……自分だって落ちそうなのに?

 よく見て「あ!」と声が出た。プロデューサーさんはかなりギリギリだ。
 ずるずると上体がずれ込んで、重心が徐々に下がっている。欄干を掴むもう片手も汗が滲んで、いつ滑ってもおかしくない。

「や、やばいよプロデューサーさんっ! 離せってば!!」
「何言ってんだ、落ちたいのか!?」

 そんなこと言ったって、このままじゃ二人とも落ちちゃう。
 あたしはいい。自分から飛び出したんだ。
 宙にいるうちに離せば、ケサランパサランも飛んで逃げられる。
 落ちるのはあたしだけでいいんだ。こんなのプロデューサーさんが付き合うことじゃない。




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