【たぬき】神谷奈緒「あたしの髪には何かが棲んでいる」
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56: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/04/17(水) 01:27:46.43 ID:n5WgkvMD0

  ◆◆◆◆


 空を見上げながら、何度も転びそうになった。
 赤信号や踏切に引っかかったり、人とぶつかりそうになったり、目の前を黒猫が横切ったり……。
 幸運が無きゃこんなもんだった。見失いそうになりながら、それでも諦めずに、プロデューサーさんは付き合ってくれた。

 いよいよ暗くなりつつある街を駆け抜け、逃げる時より必死に走って、やがて一気に視界が開けて――


 大きな橋の上で、ようやく綿毛に追いついた。


 幅広の川が、傾いた夕陽を反射して鱗みたいに輝いてる。
 橋から身を乗り出して、あたしは声を限りに叫んだ。

「おぉいっ!!」

 ケサランパサランは、手を伸ばしてギリギリ届かない空中に浮かんでいた。
 川の上は風が強い。東京湾へと流れていく風が、みんなまで持っていってしまわないか気が気じゃなかった。


 綿毛の数は、もう両手で数えられる程度の数まで減ってしまっていた。




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