【たぬき】神谷奈緒「あたしの髪には何かが棲んでいる」
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40: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/04/16(火) 02:08:01.90 ID:fzUqSW1/0

 誰にも捕まらなかった。気付かれもしなかった。
 綿毛の幸運が助けてくれたんだ。
 人ごみに隙間ができて、出口のゲートに行列は無く、追い風が背を押して、渡る信号はみんな青。
 シャボン玉の割れるようなキラキラした音が、すぐ後ろで断続的に咲き続けた。

 夜の近付く街は、七色に輝いていた。仄かな闇にネオンが滲んで、走り抜けざまに視界の端を流れ去る。
 置き去りにした遊園地の煌めきは、振り返るとお城みたいに大きくて、夕空に眩しいくらいの光を投じる。
 
 街頭の灯り出した道の先、ずっと上にはもう星があって、茜色の中でチカチカ輝いていた。


「あははっ」


 急になんだか楽しくなった。
 髪がもふもふしてる。春の夕風は肌に心地いい。

「ははっ、あははははっ!!」

 振り向く彼の不思議そうな顔。それがまたおかしくて、走りながらあたしは、涙まで滲ませて笑った。




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