5: ◆TOYOUsnVr.[sage saga]
2019/04/03(水) 01:47:35.75 ID:EU7YFYJs0
「夏葉さんはすごいです、……か」
燦々と降り注ぐ陽射しのなか、ぽつりと呟く。
果穂も樹里もおそらく本心でそう言ってくれていることは理解できている。
しかし、先程の褒め言葉を、どうしてか素直に受け取れずにいる私がいた。
私の所属しているユニットのメンバーである、果穂や樹里や凛世は、それぞれのプロデューサーと偶然の出会いからアイドルの道に進むことになったと聞いている。
初めからアイドルになるべく書類を用意し、選考を通過してアイドルとなった私と比して、経緯が大きく異なることを「すごい」と表現されるとは思っていなかった。
さらに付け加えて言えば、私を除く残る一人である智代子でさえも、選考を通過したことは共通しているが、厳密に言えば、違う。
なぜならば彼女は、選考を通過した後で、担当のプロデューサーと事務所で出会い、その際の会話がきっかけで担当されることが決まったという。
一方で私は、最初から担当するプロデューサーも所属するユニットも決まっていたようなのだ。
自分だけ経緯が異なることは当然、随分と前に知っていた。
ただ、その事実を他人の口から聞いた上に、「すごい」と言われてしまったことが、理由はわからないがこたえているらしかった。
しかし、いつまでもくだらないことを引き摺ってしまっていてはプロ失格だ。そう自分に言い聞かせる。
問題などない。
大丈夫、大丈夫、と胸の内で繰り返したのちに、タクシーを捕まえ、次のお仕事へと向かった。
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