11:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 19:18:42.85 ID:WXZGVs7k0
各列の先頭に座る生徒達へ資料の束を渡し終え、教壇に立ち戻った矢先の事でした。
指導用ノートをめくろうとすると、不意に耳へと飛び込んできた言葉。
それが奏ちゃんの声だったものですから、彼も驚いて顔を上げてしまいます。
視線の先の奏ちゃんは、左手に資料の束を持ち、右手をすいと挙げていました。
自分でも信じられないと言わんばかりの表情を浮かべて。
商売道具とも言える魅力的な唇は小さく開かれたままでした。
山本先生は不覚にも、ときめいてしまいました。
齢も四十を数えてまた数年が経ちます。
妻も子もある身とは言え、そこは悲しい男の性。
瑞々しく美しい女性には相も変わらず弱いものです。
相手が相手ですから、こればかりはしょうがありません。
と言うのも、山本先生は元々、奏ちゃんをほんの少しだけ贔屓していたのです。
教師として恥ずべき事でしょう。
謗られ、罵られ、責められて然るべきものでしょう。
その感情を、決して表へ出す気は無いにしても。
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